高齢者が特に気をつけたい薬5選|転倒・ふらつき・多剤服用を薬剤師が解説

薬の知識
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監修・執筆:薬剤師 メイ

調剤歴15年(製薬会社研究職→調剤薬局・管理薬剤師・在宅薬剤師)。3人の子を育てるママ薬剤師。服薬指導数千件の経験をもとに、正確でわかりやすい薬の情報を発信しています。|プロフィール詳細

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「父の薬が多すぎて、心配で」

「母が転んでから、薬のことが気になっていて」

介護をされているご家族から、こうしたご相談を受けることが増えました。

高齢の方の薬は、若い世代と同じようには考えられません。体の変化、複数の病気、増えていく薬。これが重なると、思わぬことが起きます。

15年の調剤経験から、特に気をつけてほしい5つをお伝えします。

この記事は高齢者本人とその家族・介護者の方に向けた情報提供です。薬の変更・中止は必ず担当医・薬剤師に相談してください。自己判断での薬の調整は行わないでください。

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高齢者の薬が難しい理由——体の変化を知る

高齢になると、薬の効き方が変わります。主な理由は3つです。

まず、腎臓と肝臓の働きが落ちること。

薬は主に腎臓や肝臓で代謝・排泄されます。ここが弱ると薬が体に長くとどまり、同じ量でも効果や副作用が強く出ることがあります。

次に、体脂肪率の変化と筋肉量の減少。脂溶性の薬は体脂肪にたまりやすくなり、効果が長引くことがあります。

そして、病気が増えれば、薬も増えること。飲み合わせのリスクが高まります。

知っておきたい「ポリファーマシー」という問題

聞きなれない言葉かもしれません。

ポリファーマシーとは、複数の薬を同時に飲むことで、かえって体に悪い影響が出る状態のことです。

一般的には、6種類以上がひとつの目安とされています。

薬の数が増えるほど、飲み合わせによる副作用も、飲み間違いも、飲み忘れも増えていきます。

窓口では「病院が増えるたびに、薬も増えました」という方によくお会いします。

いくつもの診療科から、似た成分の薬が重なって出ていることもあります。

現場エピソード

内科・整形外科・泌尿器科の3つにかかっていた患者さんのお薬手帳を確認したところ、合計11種類の薬が処方されていました。同系統の鎮痛剤が2種類重複しており、かかりつけ薬局でその情報を担当医に共有。処方を整理していただき、最終的に7種類になりました。「こんなに減らせるとは思わなかった」とご本人もご家族も驚かれていました。

特に気をつけたい薬5選

① 睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬・抗不安薬は、高齢者では特に注意が必要な薬のひとつです。若い世代より薬が体内に長くとどまりやすく、翌朝まで眠気が残ったり、ふらつきが生じたりすることがあります。

高齢の方の転倒・骨折の原因として、この種の薬の影響が指摘されています。

「夜中にトイレに起きたとき、ふらついて転んだ」。このお話を、本当によく聞きます。

睡眠薬を飲んでいる方がご家庭にいるなら、夜のトイレまでの道のりを見直してみてください。足元の明かりひとつで変わることがあります。

② 降圧薬(血圧を下げる薬)

高血圧の治療は重要ですが、高齢者では血圧を下げすぎることによる「立ちくらみ・起立性低血圧」が問題になることがあります。急に立ち上がったときにふらつく、めまいがするという症状は、降圧薬が効きすぎているサインかもしれません。

また、食事量が減ったり、体調を崩したりすると血圧が下がりやすくなるため、いつもと同じ量の降圧薬でも効きすぎることがあります。「最近よくふらつく」と感じたら、担当医に相談してください。

③ 糖尿病薬(特にSU薬・インスリン)

高齢者の糖尿病治療では、低血糖が特に危険です。食事量が少ない日・体調が悪い日に薬やインスリンをいつも通り使うと、低血糖を起こすリスクが高まります。低血糖は意識障害・転倒・骨折の原因になるだけでなく、高齢者では症状に気づきにくいことがあります。

「食欲がないから、ご飯を食べなかった」

そんな日は、必ず担当医か薬剤師に相談してください。

「シックデイルール(病気の日のルール)」として、薬の量を調整する指示が出ていることもあります。

④ 抗コリン薬(含む成分に注意)

抗コリン作用(だ液の分泌や、胃腸・膀胱の動きをおさえる作用)を持つ薬は、高齢者では口の渇き・便秘・尿閉(尿が出にくくなること)・認知機能への影響が出やすいとされています。処方薬だけでなく、市販の風邪薬・鼻炎薬・胃腸薬にも抗コリン成分(ジフェンヒドラミンなど)が含まれていることがあります。

「最近、物忘れが増えた気がする」「便秘がひどくなった」

年のせいだと思っていた変化が、市販薬の成分によるものだったということがあります。

⑤ 腎機能に影響する薬(NSAIDs・一部の抗菌薬)

イブプロフェン・ロキソプロフェンなどのNSAIDs系鎮痛剤は、腎機能が低下している高齢者では特に注意が必要です。腎臓への血流を減らす作用があるため、腎機能をさらに悪化させる可能性があります。

「市販の鎮痛剤だから大丈夫」とは言えません。ここが、高齢の方の薬の難しいところです。

腎臓の状態を知っている担当医・薬剤師に、市販薬を使う前に必ず相談してください。

薬の種類 高齢者での主なリスク 気をつけたいサイン
睡眠薬・抗不安薬
(ベンゾジアゼピン系)
翌朝の眠気・ふらつき・転倒・骨折 夜間トイレ時のふらつき・朝の眠気が強い
降圧薬 立ちくらみ・起立性低血圧・転倒 立ち上がり時のめまい・ふらつき
糖尿病薬・インスリン 低血糖・意識障害・転倒 食欲低下時の低血糖症状・冷や汗・ぼんやり感
抗コリン薬
(市販薬にも含まれることあり)
口の渇き・便秘・尿閉・認知機能への影響 急な物忘れ・便秘悪化・排尿困難
NSAIDs系鎮痛剤 腎機能悪化・胃腸障害 むくみ・尿量の変化・胃の不快感
高齢者が特に気をつけたい薬5選

「お薬相談外来」「服薬情報等提供」を活用する

薬の数が多くて不安。そんなときに使える仕組みがあります。

かかりつけ薬局の「服薬情報等提供サービス」です。

薬剤師がすべての薬をまとめて管理し、重複や問題のある飲み合わせがないかを確認したうえで、担当医に情報を届けます。

また、一部の病院では「ポリファーマシー外来」「お薬相談外来」を設けているところもあります。「薬が多すぎて管理が大変」「薬を減らせないか相談したい」という場合は、かかりつけ医に相談してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 親の薬が10種類以上あります。減らしてもらうことはできますか?

A. 相談できます。薬の種類が多いことで、ふらつきや食欲の低下が起きているケースは少なくありません。かかりつけ薬局に「多くて飲みきれない」と伝えると、薬剤師が飲み合わせや重複を整理し、医師へ提案してくれます。自己判断で勝手にやめると急に悪化する薬(血圧・心臓・糖尿病の薬など)があるので、必ず相談してから減らしてください。

Q. 飲み忘れを防ぐのに、いちばん続けやすい方法は何ですか?

A. 現場でうまくいっているのは、お薬カレンダーやピルケースに1週間分をまとめてセットする方法です。「飲んだかどうか」が目で見てわかることが何より大事で、アプリのアラームより効果が続きやすい方が多いです。ご家族が離れて暮らしている場合は、写真を送ってもらうだけでも確認になります。

Q. 一包化(いっぽうか)は頼めばしてもらえますか?費用はかかりますか?

A. 医師の指示があれば対応できます。朝・昼・夕の薬を1回分ずつ袋にまとめる方法で、種類が多い方や手先が使いにくい方に向いています。保険が適用される場合は費用がかかりますが、飲み間違いや残薬が減ることを考えると負担に見合うことが多いです。まずは薬局で「一包化できますか」と聞いてみてください。

まとめ:高齢者の薬管理で大切な3つのこと

  • 睡眠薬・降圧薬・糖尿病薬・抗コリン薬・NSAIDs系は高齢者で特に注意が必要
  • ポリファーマシー(多剤服用)は転倒・副作用・飲み間違いのリスクを高める
  • 「最近ふらつく」「物忘れが増えた」などの変化は薬の影響かもしれない——担当医・薬剤師に相談を
  • 市販薬でも抗コリン成分・NSAIDsは高齢者には注意が必要。必ず薬剤師に確認を
  • かかりつけ薬局での一元管理・服薬情報提供サービスを積極的に活用する

あわせて読みたい:お薬手帳の正しい使い方 / お薬手帳を持ち歩かないリスク / 患者さんがよくする薬の思い込み10選

高齢のご家族の薬について心配な方へ

「薬が多すぎて不安」「最近ふらつくようになった」など、お薬のことでご心配があればかかりつけ薬局の薬剤師にご相談ください。ご本人と一緒に、またはご家族だけでのご相談もお受けします。


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薬剤師メイ

この記事を書いた人

メイ|現役薬剤師(調剤歴15年)・FP2級

製薬会社の研究職から調剤薬局へ転職し、岩手で管理薬剤師を経験。現在は東京で3人の子どもを育てながら、施設在宅をメインにパート薬剤師として働いています。数千件の服薬指導で実際に受けたご質問をもとに、「難しい薬の知識をわかりやすく」をモットーに発信しています。

→ プロフィール詳細・転職体験記はこちら𝕏 @mei_yakuzaishi📷 Instagram

※本記事は薬剤師による一般的な情報提供を目的としており、個別の医療アドバイスではありません。薬の変更・中止は必ず担当医・薬剤師にご相談ください。

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