監修・執筆:薬剤師 メイ
調剤歴15年(製薬会社研究職→調剤薬局・管理薬剤師・在宅薬剤師)。3人の子を育てるママ薬剤師。服薬指導数千件の経験をもとに、正確でわかりやすい薬の情報を発信しています。|プロフィール詳細
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肩こりは日本人の国民病ともいわれ、厚生労働省の国民生活基礎調査では「自覚症状のある疾患・症状」として常に上位に入っています。ドラッグストアに行くと湿布・塗り薬・飲み薬・漢方薬と選択肢が非常に多く、「どれを選べばいいの?」と迷う方が多いです。調剤薬局で15年、毎日患者さんの相談を受けてきた薬剤師のメイが、肩こりの薬の選び方を外用薬・内服薬・漢方薬に分けて丁寧に解説します。
肩こりの原因を知ることが選薬の第一歩
肩こりといっても、その原因によって効果的な薬は異なります。まず自分の肩こりがどのタイプかを確認してから薬を選ぶことが、薬剤師として最も大切だとお伝えしていることです。
血行不良タイプ(長時間同じ姿勢・デスクワーク)
最も多いタイプ。長時間パソコンやスマホを見続けることで首・肩・背中の筋肉が緊張し、血管が圧迫されて血行が悪くなります。乳酸などの疲労物質が蓄積し、それが痛みの原因になります。特徴は「1日の終わりにひどくなる」「温めると楽になる」「同じ姿勢を続けていると悪化する」です。テレワーク普及後に特にこのタイプの相談が増えています。薬剤師として「最近パソコン作業が増えましたか?」と聞くと、「そういえば在宅勤務になってから悪化した」という方が多いです。
筋疲労タイプ(運動後・重いものを持つ)
激しい運動後・重い荷物を持った後・引っ越しなど普段しない動作をした後の筋肉疲労が原因のタイプです。筋繊維に微細な損傷が起き、炎症反応が生じることで痛みが出ます。このタイプは「急に始まった」「特定の動作をすると痛む」「触ると熱感がある」という特徴があります。急性期(受傷後48時間以内)は冷やすことが重要で、この時期に温めると炎症が悪化します。
ストレス・緊張タイプ
精神的なストレス・緊張・不安が持続することで、自律神経が乱れて筋肉の緊張が高まるタイプです。「仕事が忙しい時期だけひどくなる」「休日は比較的楽」「不眠・頭痛・胃腸症状を伴う」という特徴があります。このタイプには薬だけでなく、ストレス管理・睡眠改善・漢方薬(加味逍遙散・柴胡加竜骨牡蛎湯など)の組み合わせが効果的です。
なお、頸椎ヘルニア・変形性頸椎症・胸郭出口症候群などの器質的疾患が原因の場合は、市販薬では根本治療できないため整形外科の受診が必要です。「手や腕にしびれがある」「片側だけひどい」「安静にしても痛い」場合は早めに受診を勧めます。
外用薬(塗り薬・ゲル)の選び方
外用鎮痛薬は「貼る(湿布)」か「塗る(クリーム・ゲル・ローション)」かの2タイプがあります。どちらも同じ鎮痛成分を皮膚から浸透させる仕組みですが、使い勝手が異なります。
主な外用鎮痛成分の特徴
外用鎮痛薬に含まれる主な成分は3系統です。
インドメタシン系(インドメタシン):最も古くから使われている外用NSAIDsで、鎮痛・抗炎症作用が強力。バンテリンコーワやボルタレンEXテープに含まれます。日本で市販外用鎮痛薬として最も売れているカテゴリーです。フェルビナク系(フェルビナク):インドメタシンと同等以上の鎮痛・抗炎症効果があるとされ、アンメルツヨコヨコSなどに含まれます。ジクロフェナク系(ジクロフェナクナトリウム):より新しいNSAIDsで皮膚透過性が高く、深部組織への浸透が良いとされています。ボルタレンEXテープなどに含まれます。
バンテリンコーワが肩こりに選ばれる理由
バンテリンコーワ(インドメタシン1%配合)は、肩こりの薬として最も広く認知されているブランドの一つです。ゲル剤は塗った後に素早く乾き、べたつきが少なく服を着ても気になりにくいのが特徴。インドメタシンは組織への浸透力があり、筋肉や関節周辺の炎症を抑えながら痛みをとります。
薬剤師として現場でよく聞くのは「バンテリンを肩に塗るとすっとして気持ちいい」という声。これはインドメタシンの消炎鎮痛作用に加え、冷感成分(メントールなど)が局所を冷却し血行を調整するためです。ただし皮膚の弱い方はかぶれが出ることがあるので、最初は少量でパッチテストすることをおすすめします。

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Amazonで見る湿布との使い分け(塗り薬 vs 湿布)
塗り薬と湿布は同じ鎮痛成分でも使い勝手が違います。塗り薬(ゲル・クリーム)は塗った後すぐに動ける、首や肩など貼りにくい部位に使いやすい、量を調節しやすい、体を動かしながら使えるという特徴があります。湿布はじっくり成分を浸透させたい・長時間固定したい場合に向いており、温感湿布は慢性的な血行不良タイプ、冷感湿布は急性の炎症・打ち身・捻挫タイプに使い分けます。
湿布の詳しい選び方については 湿布の選び方はこちら を参考にしてください。
内服薬(飲み薬)の選び方
外用薬でカバーできないときや、広範囲の肩こりには飲み薬が有効です。肩こりに使う内服薬は大きく「ビタミン剤」と「鎮痛薬(NSAIDs)」の2種類があります。
ビタミンB1・B6・B12が肩こりに効く理由
「ビタミンB群は神経の栄養素」とよくいわれますが、肩こりとどう関係するのでしょうか。ビタミンB1(チアミン)は糖質をエネルギーに変換する際に必須で、不足すると筋肉のエネルギー代謝が低下し疲労が蓄積します。ビタミンB6(ピリドキシン)はアミノ酸代謝・神経伝達物質の合成に関与し、筋肉の代謝と神経機能を支えます。ビタミンB12(シアノコバラミン)は末梢神経の修復・再生に関与し、神経痛・しびれ・筋肉の疲労回復に効果があります。
これらのビタミンB群を高用量で配合した代表的な製品がアリナミンEXです。「アリナミンEX」は処方薬の「ビタメジン」に配合されているのと同系統の成分を市販薬として配合しており、長年にわたり肩こり・腰痛・神経痛に使われてきた信頼のあるブランドです。
薬剤師として「肩こりと腕のだるさが同時にある」「筋肉の疲れが抜けない」という方にはビタミンB群配合の内服薬を勧めることが多いです。外用薬だけでは届かない筋肉内・神経レベルでのケアができます。

アリナミンEXプラス 270錠
Amazonで見るロキソニンSなど痛み止めは「応急処置」として
ロキソニンS(ロキソプロフェンナトリウム)・イブ(イブプロフェン)・バファリン(アセチルサリチル酸)などのNSAIDs系鎮痛薬は、急性の強い痛みに対して即効性があります。ただし薬剤師として伝えていること:これらは「痛みの根本治療」ではなく「症状の抑制(応急処置)」であるということです。連用すると胃腸障害(胃潰瘍・胃炎)・腎機能への影響のリスクがあり、「毎日のように飲む」のは避けるべきです。また後述する薬物乱用頭痛(MOH)のリスクもあります。頓服(痛いときだけ飲む)として使い、慢性化している場合はビタミン剤・漢方薬・外用薬・生活習慣改善を組み合わせることが重要です。
漢方薬の選び方
「肩こりに漢方?」と思う方もいるかもしれませんが、肩こりは漢方薬がよく効く症状の一つです。特に慢性の肩こりや、血行不良・ストレスが原因のタイプには漢方薬が根本から体質を改善してくれることがあります。
葛根湯(かっこんとう)
葛根湯は風邪薬として有名ですが、実は肩こり・首こりに最も使われる漢方薬の一つです。「葛根(かっこん)」はクズの根から取られる生薬で、首・肩・背中の筋肉の緊張をゆるめる作用があります。
葛根湯が肩こりに向くのは、体力が中程度以上(実証〜中間証)の方です。具体的には:首・肩・背中の強い張り・こわばり、発汗が少なく体が丈夫な方、急性期の肩こり(悪化した直後)、冬の寒さで悪化するタイプの肩こりに特に効果的です。
薬剤師として「風邪の引きはじめに飲む葛根湯と同じですか?」とよく聞かれます。はい、同じ製品です。首・背中の筋肉を温め緊張をほぐす作用が、風邪の初期症状(悪寒・頭痛・首のこり)にも、慢性肩こりにも効くのです。
服用のポイントは空腹時(食前30分または食間)に飲むこと。食後に飲むと成分の吸収が遅くなります。お湯に溶かして温かいまま飲むと効果が出やすいです。

ツムラ漢方葛根湯エキス顆粒A 20包
Amazonで見る桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桂枝茯苓丸は冷え性の記事でも紹介しましたが、肩こりにも非常によく使われる漢方薬です。特に「のぼせ・ほてりがあるのに下半身は冷える(冷えのぼせ)」「肩こりがひどくて頭痛を伴う」「月経不順・月経痛を伴う女性の肩こり」に向いています。
桂枝茯苓丸は「駆瘀血(くおけつ)剤」といわれ、血の滞り(うっ血)を解消することで肩周辺の血流を改善します。女性ホルモンバランスの乱れによる肩こりにも効果的で、更年期世代の女性から好評です。葛根湯と違い、体力が中程度以上の方向けで、虚弱体質の方には向きません。
薬だけじゃない!肩こり改善の非薬物ケア
温める vs 冷やす(急性炎症は冷やす、慢性は温める)
肩こりに「温める」べきか「冷やす」べきかは、多くの方が迷うポイントです。基本ルールは次の通りです。
冷やす(アイシング)が適切なケース:急性の外傷・筋肉の損傷直後(受傷後48時間以内)、触ると熱感・腫れがある炎症性の痛み、運動直後の筋肉痛初期。この時期に温めると炎症が悪化します。袋に入れた氷・アイスパックを布に包んで15〜20分間当てることを推奨します。
温める(温罨法)が適切なケース:慢性的な血行不良・筋肉疲労タイプの肩こり、デスクワーク・長時間同姿勢後のこわばり、入浴・ホットパックで楽になると感じる場合。温めることで筋肉がゆるみ血行が改善します。
「慢性的な肩こりだけど急に悪化した」という場合は、まず冷やして急性炎症を落ち着かせてから、数日後に温めるという段階を踏むと良いです。
ストレッチ(肩甲骨はがし・首回し)
肩こり改善で最も効果的な運動の一つが肩甲骨はがしです。肩甲骨周囲の筋肉(僧帽筋・菱形筋・前鋸筋)をほぐすことで、肩全体の血行が一気に改善します。
簡単な肩甲骨はがしの方法:両腕を前方に伸ばし手のひらを向き合わせる→そのまま両腕を後方に引きながら肩甲骨を背骨に向かって寄せる(背中を「締める」感覚)→5秒キープしてゆっくり戻す。これを10回繰り返します。
首回しストレッチ:ゆっくりと首を右に倒して10秒キープ→左に倒して10秒キープ→前に倒して10秒キープ。後ろには倒さない(頸椎への負担が大きいため)。作業の合間に1〜2時間ごとに行うことで、肩こりの蓄積を防げます。
姿勢改善(モニター位置・椅子の高さ)
肩こりの根本原因の多くは「不良姿勢」です。特に「頭部前方位(Forward Head Posture)」=頭が肩より前に出た姿勢は、頭の重さ(約4〜6kg)がそのまま首・肩の筋肉にかかり続けます。
デスク環境の見直しポイント:
- モニターの上端が目の高さと同じになるよう調整(見下ろし姿勢は首への負担大)
- 椅子の高さは膝が90度になるよう調整し、足裏が床につくこと
- 背もたれにしっかり背中をつけ、腰部にクッションを当てて腰椎の自然なカーブを保つ
- キーボード・マウスは肘が90度になる位置に配置
- スマホを見るときは画面を目線の高さに上げる(俯き姿勢を避ける)
薬剤師として現場で感じるのは「湿布で痛みは取れても、姿勢を変えなければまたすぐこる」ということ。薬はあくまでサポート。姿勢と運動が根本解決です。
マッサージ・ホットアイマスク
セルフマッサージは血行促進・筋緊張緩和に有効です。肩甲骨の内側(菱形筋)や首の付け根(後頭下筋群)を重点的にほぐすと効果的です。ただし痛い場所を強くもむと炎症が悪化することがあるので、「気持ちいい」程度の力加減が大切です。
ホットアイマスクは目の疲れ(眼精疲労)からくる肩こりに特に有効です。目の周囲の筋肉(眼輪筋)や後頭部の筋肉は首・肩と連動しており、目を温めるだけで首肩のこりが和らぐことがあります。就寝前のルーティンに取り入れると、睡眠の質改善にも効果があります。
薬剤師がよく受ける肩こりの質問
Q:湿布と塗り薬、どちらが効きますか?
A:有効成分の皮膚透過量はほぼ同等という研究結果が多く、どちらが「効く」かは使い方と好みによる部分が大きいです。
薬剤師として使い分けの基準をお伝えするとすれば:動き回る日中は塗り薬(こまめに塗り直せる・動きが制限されない)、夜間じっくり浸透させたいときや広範囲は湿布(貼りっぱなしで就寝できる)——という使い分けが実用的です。肩など動く部位は湿布が剥がれやすいので、ジェル・クリームタイプの塗り薬の方が便利だという患者さんも多いです。
Q:毎日飲んでも大丈夫ですか?(薬物乱用について)
A:ロキソニンSなどの鎮痛薬を月に10日以上、3ヶ月以上連続して使用すると「薬物乱用頭痛(Medication Overuse Headache:MOH)」のリスクがあることが知られています。これは鎮痛薬を飲めば飲むほど頭痛・肩こりが起きやすくなるという逆説的な状態です。
肩こりの痛み止めを「毎日飲まないとつらい」という方は要注意。薬に頼りすぎることなく、ストレッチ・姿勢改善・ビタミン剤・漢方薬などに切り替えることを検討してください。「なんとなく鎮痛薬を続けている」という方には、薬局でもぜひ一度相談してください。
Q:妊娠中の肩こり、何が使えますか?
A:妊娠中の肩こりは薬の選択肢が非常に限られます。薬剤師として妊婦さんからよく相談を受けるテーマです。
外用薬(湿布・塗り薬):NSAIDs系(インドメタシン・ジクロフェナク・フェルビナク・ケトプロフェン)の外用薬は、特に妊娠後期(28週以降)に胎児の動脈管早期閉鎖のリスクがあるとして使用を避けるべきとされています。妊娠中期以前も自己判断での使用は避け、必ず産婦人科・薬剤師に相談してください。
内服薬:NSAIDs(ロキソニン・イブプロフェンなど)は妊娠後期は禁忌、中期も慎重投与。アリナミンEX(ビタミンB群)は妊娠中でも比較的使いやすいとされますが、量と成分の確認が必要です。
妊娠中の肩こり対策として最も安全なのは非薬物療法です:温める(温タオル・入浴〔38〜39℃のぬるめのお湯・長時間は避ける〕)、ストレッチ・軽い体操(産婦人科に許可をもらって行うマタニティヨガなど)、姿勢改善(抱き枕の活用・正しい授乳姿勢)、マタニティマッサージ(専門家による)。どうしても薬が必要な場合は必ず産婦人科医に相談してください。
まとめ
肩こりの薬の選び方を外用薬・内服薬・漢方薬に分けて解説しました。ポイントをまとめます。
外用薬(塗り薬・湿布)は肩こりの局所ケアに有効で、インドメタシン・フェルビナク・ジクロフェナクの3系統から選びます。動きやすさを重視するなら塗り薬(バンテリンコーワゲルなど)、じっくり浸透させるなら湿布。温感は慢性タイプ、冷感は急性炎症タイプに合わせます。
内服薬(飲み薬)はビタミンB群(アリナミンEXプラスなど)が筋肉疲労・神経からくる肩こりの根本ケアに有効。ロキソニンSなどのNSAIDs鎮痛薬は即効性がありますが応急処置として捉え、連用は避けましょう。
漢方薬は体力中等度以上の急性・慢性の首肩こりには葛根湯、冷えのぼせ・うっ血を伴う慢性肩こり(特に女性)には桂枝茯苓丸が基本選択肢です。
薬はあくまでサポート。根本改善には姿勢の見直し・ストレッチ・適度な運動・入浴などの生活習慣が不可欠です。「いつも同じ薬を使っているのに改善しない」という方は、ぜひ薬局の薬剤師に一度相談してみてください。あなたの肩こりのタイプに合わせた最適な選択をお手伝いします。

この記事を書いた人
メイ|現役薬剤師
調剤薬局に勤続15年の現役薬剤師。服薬指導と医薬品情報管理(DI)を専門とし、これまで数千件以上の服薬指導に携わってきました。「難しい薬の知識をわかりやすく」をモットーに、現場のリアルな経験をもとに発信しています。→ プロフィール詳細はこちら
