「住宅ローンは、早く返したほうが得」。よく言われることですし、利息が減るのは本当です。
それでも私は、いまは繰り上げ返済をしないと決めました。ファイナンシャル・プランニング2級の勉強をしているので、同じ額を返すなら期間短縮型のほうが利息が減ることも知っています。知ったうえで、いまは返しません。
この記事は、その理由と、「ではいつ返すのか」という線の引き方の記録です。わが家は変動金利・元利均等返済・20年で、毎月47,000円を返しています。金利は借りたときの1.225%から1.475%へ上がりました。
💡 わが家が決めたこと
- いまは繰り上げ返済をしない
- 金利が3%を超えたら、そこで計算し直す(自動的に全部返す、という意味ではありません)
- 返すときは一部ではなく、残り全部を一度に。一部だけ返すと手数料がかかるため
- (もし一部ずつ返すなら期間短縮型。ただしわが家はその予定がありません)
- 繰り上げ返済より先に、教育資金
繰り上げ返済には2つのやり方があります
繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別に、まとまったお金を返すことです。返したお金はすべて元金に充てられるので、そのぶん先の利息が消えます。
やり方は大きく2つに分かれます。一部だけ返すか、残り全部を一度に返すかです。
全部返せばローンはそこで終わります。考えることはありません。選ぶところがあるのは、一部だけ返すときです。このとき、次の2つから選びます。
| 期間短縮型 | 返済額軽減型 | |
|---|---|---|
| 何が変わるか | 返し終わる時期が早くなる | 毎月の返済額が下がる |
| 毎月の返済額 | 変わらない | 下がる |
| 返済期間 | 短くなる | 変わらない |
| 利息の減り方 | 大きい | 期間短縮型より小さい |
| 向いている人 | 総額を減らしたい人 | 毎月の負担を軽くしたい人 |
❗ 全額を一度に返す場合、この2つは関係ありません
残り全部を返せば、返済期間も毎月の返済額もなくなります。期間短縮型・返済額軽減型という区別は、一部だけ返して、ローンが続くときの話です。ここを分けて考えないと、話がこんがらがります。
同じ金額を同じ時期に返すなら、期間短縮型のほうが利息は多く減ります。利息は「残高 × 年利 ÷ 12」で毎月かかるので、残高が減っている期間が長いほど効くからです。私が借りた金融機関の窓口でも、同じ説明を受けました。
⚠️ ただし、毎月の負担は軽くなりません
期間短縮型を選ぶと、毎月の返済額は今までどおりです。まとまったお金を返しても、毎月の支払いは変わりません。家計が苦しくて月々を下げたい場合は、利息が減る額は小さくても返済額軽減型のほうが合っています。得かどうかではなく、何を楽にしたいかで選ぶところです。
実際にどのくらい減るのか
わが家の数字ではなく、わかりやすいように借入1,000万円・20年・年1.475%で新たに借りた場合で計算しました。毎月の返済額は48,140円、そのまま20年間返すと、利息は合計で約155万円になります。
1年返したあと(残高およそ957万円)に、一部だけ繰り上げ返済した場合です。型は期間短縮型を選んだものとします。
| 繰り上げ返済する額 | 利息の合計 | そのままとの差 | 早く終わる期間 |
|---|---|---|---|
| 50万円 | 約140万円 | 約15万円 減る | 1年1か月 |
| 100万円 | 約125万円 | 約30万円 減る | 2年3か月 |
| 200万円 | 約99万円 | 約56万円 減る | 4年5か月 |
| 300万円 | 約77万円 | 約78万円 減る | 6年6か月 |
100万円を返すと、利息が約30万円減り、返し終わるのが2年3か月早くなります。効果は、確かに大きいです。
ただし、この100万円は手元から消えます。団信の保障も100万円ぶん小さくなります。それでも返すかどうかは、表の数字だけでは決められません。
🔢 この数字は、そのままでは使えません
金利・残高・残りの期間が違えば、結果も変わります。上の表は、計算の進み方を見てもらうための例です。ご自分の返済予定表に載っている残高と金利で計算してください。借りている金融機関のサイトに、繰り上げ返済の試算ができるページがあることが多いです。
それでも、いまは返さないと決めた3つの理由
① 住宅ローンには、生命保険の役割もあるから
私も住宅ローンを組むときに団体信用生命保険(団信)に加入しました。多くの金融機関では、加入が条件になっています。契約者が亡くなったり、所定の高度障害状態になったりしたときに、残っているローンがゼロになる保険です。
ここが、繰り上げ返済を考えるときに見落とされやすいところです。
繰り上げ返済をすると、この保障も同じだけ小さくなります。残高1,000万円のローンには「もしものときに1,000万円が消える」という価値がついています。500万円を先に返せば、消えるのは残りの500万円だけです。
3人の子どもを育てている私にとって、ここは軽い話ではありません。手元のお金を使って、保障を減らすことになるからです。
📋 団信について確認しておくこと
- どんなときに残高がゼロになるのか(死亡のみか、高度障害やがんなども含むか)
- 保険料がローンの金利に含まれているか、別に払っているか
- すでに入っている生命保険と重なっていないか
団信の内容は契約によってかなり違います。ご自分の契約書か、借りている金融機関で確認してください。
② 返したお金は、引き出せないから
繰り上げ返済は、片道切符です。返したお金は戻ってきません。あとで必要になっても、同じ条件で借り直すことはできません。
わが家にはこれから、こういう出費が控えています。
- 子どもの進学にかかるお金
- 家の修繕(持ち家なので、いつか必ず来ます)
- 車の買い替え
- 自分が働けなくなったときの生活費
ローンを減らしても、これらの支払いは待ってくれません。手元にお金がなければ、金利の高い別の借入に頼ることになります。1.475%のローンを減らすために、あとでもっと高い金利で借りることになったら、意味がありません。
💰 「これだけは現金で残す」額の決め方
いくら残すかは家庭ごとに違うので、決め方だけ書きます。わが家は、次の3つを足した額を下回らないようにしています。
- 生活費の数か月分(働けなくなっても暮らせる期間)
- 近いうちに確実に出ていくお金(進学・修繕・車)
- 急な出費の枠(金額を決めずに持っておく分)
この合計を超えた分が、はじめて「返してもいいお金」です。順番が逆になると、家計が一気に細くなります。
③ いま減らせるのは「1.475%ぶん」だけだから
繰り上げ返済で確実に得られるのは、その先の1.475%の利息が消えることです。元本が保証された運用で年1.475%を確実に出すのは簡単ではないので、これはこれで立派な利回りです。
ただ、わが家で繰り上げ返済に回せるお金は、これから貯める分と、老後資金としてNISAで運用しているお金です。後者を使うということは、運用をやめるということになります。
運用は確実ではありません。増えることも、減ることもあります。一方で繰り上げ返済は、1.475%ぶんを確実に減らします。確実な1.475%を取るか、不確実な運用を続けるか。これは損得の計算というより、どちらのほうが落ち着いて暮らせるかという問題だと思っています。
いまの私の答えは「運用を続ける」です。金利が1.475%と低く、老後資金を取り崩してまで返す理由がないからです。ただしこの答えは、金利が変われば変わります。だから、線を引きました。
では、いつ返すのか。私は「金利3%」を線にしました
ここで大事なのは、3%は「超えたら自動的に全部返す」線ではないということです。
3%は、そこで立ち止まって計算し直すための線です。そのときの残高・残りの期間・貯まっている額・教育費の見通しを並べて、はじめて返すかどうかを決めます。いま決められるのは、いつ考え直すかまでです。
なぜ3%なのか
毎月返している47,000円の中身が、金利によってこう変わるからです。
| 年利 | 元金に回る分の割合 | |
|---|---|---|
| 1.225%(借りたとき) | 約79% | ほとんどが元金に回っていました |
| 1.475%(いま) | 約75% | |
| 2.0% | 約66% | |
| 3.0% | 約49% | 半分以上が利息へ |
| 4.0% | 約31% |
3%を超えると、返しているお金の半分以上が利息に消えます。元金がなかなか減らない状態です。ここまで来たら、手元のお金と比べ直す価値があります。
⚠️ 元利均等返済だと、これが見えません
わが家は元利均等返済です。金利が上がっても、毎月の支払額は47,000円のまま変わりません。変わるのは中身だけです。実際、1.225%から1.475%に上がったとき、利息は9,881円から11,898円に増え、元金に回る分は37,119円から35,102円に減りました。合計は同じ47,000円です。
通帳を見ているだけでは、何も起きていないように見えます。
▶ 返済額は変わらないのに、元金の減りが遅れていた話
📝 3%になったら、この順番で計算し直す
- そのときの残高と残りの期間を返済予定表で確認する
- このまま返した場合、あと何円の利息を払うのかを出す
- 手元の現金から「残すと決めた額」を引き、返せる上限を出す
- 教育費がいちばん重くなる時期と、返済が終わる時期を並べる
- そのうえで、返すか・待つかを決める
返すときは一括で。一部返済には手数料がかかります
私が借りた金融機関では、一部だけ繰り上げ返済すると手数料がかかり、全額を一括で返す場合はかかりません。手続きも、窓口に行く必要がありそうです。
これは借入の条件を聞いたときに教えてもらったことで、詳しい説明までは受けていません。それでも、この一言で方針は決まりました。こまめに少しずつ返すのではなく、返すと決めたときに一括で返すという形です。
手数料は金融機関によってまったく違います。インターネットなら何度でも無料というところもあれば、窓口で数万円かかるところもあります。「繰り上げ返済は得」と考える前に、自分の契約を確認してください。
📞 借りているところに確認すること
- 一部繰り上げ返済の手数料はいくらか
- 全額を一括で返すときの手数料はいくらか
- いくらから返せるか(1万円単位か、100万円単位か)
- インターネットでできるか、窓口だけか
- 期間短縮型と返済額軽減型、どちらも選べるか
住宅ローン控除を受けている人は、残り10年を切らないように
これは、繰り上げ返済で取り返しがつかなくなる失敗です。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の対象になる借入金には、国税庁の説明で次の条件があります。
10年以上にわたり分割して返済する方法になっている新築等のための一定の借入金または債務(住宅とともに取得するその住宅の敷地の用に供される土地等の取得のための借入金等を含みます。)があること
出典:国税庁 タックスアンサー No.1211-1「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 中古住宅を取得した場合は No.1211-3 に、同じ条件が書かれています。
つまり、期間短縮型の繰り上げ返済で、借りた日から完済までの期間が10年未満になってしまうと、その年以降は控除が受けられなくなります。利息を減らすつもりが、戻ってくるはずの税金を失う形になります。
控除を受けている間は、繰り上げ返済で年末の残高が減ると、そのぶん控除額も小さくなります。控除が終わってから返すという考え方もあります。どちらが有利かは、金利と控除額を並べて比べないとわかりません。
私自身、申請は今年が初めてです。条件に当てはまるかどうかを自分で判断せず、税務署に確認するつもりです。繰り上げ返済を考えるのは、そのあとです。
⚠️ 迷ったら、返す前に確認を
控除の額や期間は、住みはじめた年や住宅の種類によって違います。繰り上げ返済をする前に、税務署か、借りている金融機関に「この返し方で控除は続きますか」と聞いてください。返してしまってからでは戻せません。
わが家の順番
- 教育資金をいちばん先に貯める
- 決めた額の現金は手元に残す
- 老後資金の運用はやめない
- 金利が3%を超えたら、残高と残り期間で計算し直す
- 返すと決めたら、一部ずつではなく残り全部を一度に(一部返済には手数料がかかるため)
- ただし住宅ローン控除の10年を切らないか、先に確認する
「早く返したほうが得」は、利息だけを見れば正しい話です。でも家計には、利息のほかに保障と手元のお金と税金があります。4つを並べた結果、わが家はいま返さないという答えになりました。
金利が上がれば、答えも変わります。そのときにまた計算します。
よくある質問
Q. 繰り上げ返済はしないほうがいいのですか
A. 一概には言えません。手元のお金に余裕があり、団信の保障が減っても困らず、住宅ローン控除も終わっているなら、繰り上げ返済は利息を確実に減らす有効な方法です。逆に、これから大きな出費が控えている・控除を受けている最中・手元の現金が少ない、という場合は急がないほうが安全です。わが家は後者なので、いまは返していません。
Q. 期間短縮型と返済額軽減型は、どちらが得ですか
A. 同じ金額を同じ時期に返すなら、利息が多く減るのは期間短縮型です。ただし毎月の返済額は下がりません。毎月の負担を軽くしたいなら返済額軽減型です。どちらが得かではなく、何を楽にしたいかで選んでください。
Q. 全額を一度に返す場合も、期間短縮型を選ぶのですか
A. 選びません。残り全部を返せばローンは終わるので、返済期間も毎月の返済額もなくなります。期間短縮型・返済額軽減型という選択は、一部だけ返してローンが続く場合のものです。わが家は一部返済に手数料がかかるため、返すときは残り全部を一度に返すつもりです。
Q. 繰り上げ返済はいくらからできますか
A. 金融機関によります。インターネットなら1万円から受け付けるところもあれば、窓口で100万円単位というところもあります。手数料とあわせて、借りているところに確認してください。
Q. 住宅ローン控除を受けている間に繰り上げ返済してもいいですか
A. できますが、注意が必要です。年末の残高が減ると、その年の控除額も減ります。さらに、期間短縮型で借りた日から完済までの期間が10年未満になると、その年以降は控除そのものが受けられなくなります。返す前に税務署か金融機関に確認してください。
Q. NISAで運用するのと繰り上げ返済、どちらを優先すべきですか
A. 繰り上げ返済は、ローンの金利ぶんを確実に減らせます。運用は増えることも減ることもあります。確実さを取るか、期待値を取るかの違いなので、どちらが正解とは言えません。わが家は金利が1.475%と低いあいだは運用を続け、3%を超えたら比べ直すことにしました。
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この記事を書いた人
メイ|現役薬剤師(調剤歴15年)・FP2級
製薬会社の研究職から調剤薬局へ転職し、岩手で管理薬剤師を経験。現在は東京で3人の子どもを育てながら、施設在宅をメインにパート薬剤師として働いています。ファイナンシャルプランナー2級。家計のライフプラン表を毎年見直しています。
※本記事は筆者が自分の家計で考えたことの記録であり、個別の金融相談・投資助言ではありません。記載の金額・金利・試算は筆者の一例で、ご家庭の収入・残高・金利によって答えは変わります。繰り上げ返済の手数料や受付の方法、団体信用生命保険の保障内容は、金融機関や契約によって大きく異なります。住宅ローン控除の適用条件や控除額は、住みはじめた年や住宅の種類によって違いますので、税務署または国税庁のページでご確認ください。ご自身の返済予定表の数字で計算し、必要に応じて窓口にご相談のうえご判断ください。
