監修・執筆:薬剤師 メイ
調剤歴15年(製薬会社研究職→調剤薬局・管理薬剤師・在宅薬剤師)。3人の子を育てるママ薬剤師。服薬指導数千件の経験をもとに、正確でわかりやすい薬の情報を発信しています。|プロフィール詳細
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📌 結論:芍薬甘草湯は効きますが、毎日飲む薬ではありません
こむら返りには芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)という漢方があり、数分で効くこともあります。ただし甘草(かんぞう)という成分に、飲み続けると起こる副作用があります。ここを知らずに毎晩飲んでいる方が本当に多いです。
- つったとき → 芍薬甘草湯。効き始めが速く、頓服向き
- 毎日は飲まない → 甘草でむくみ・血圧上昇・力が入らないなどが起こることがあります
- 予防の基本 → 水分とミネラル、寝る前のふくらはぎのばし、冷やさない
- その場の対処 → つま先を手前にゆっくり引く。反対に伸ばすと悪化します
- 受診の目安 → 毎晩くり返す、片脚だけ、しびれや脱力をともなう
「夜中にふくらはぎがつって、飛び起きた」——年齢を問わず、薬局でよくいただくご相談です。あの痛みは数十秒でも本当につらいものです。
市販薬にはっきりした答えがあるテーマですが、その薬には毎日飲んではいけない理由があります。効く薬ほど、使い方を知っておく必要があります。この記事でお伝えします。
なぜ足がつるのか
こむら返りは、筋肉が自分の意思と関係なく強く縮んだまま戻らなくなった状態です。筋肉の縮み具合を調整しているのは、血液中のミネラル(ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム)と、神経の信号です。このバランスが崩れると起こります。
| きっかけ | 起こりやすい場面 |
|---|---|
| 水分・ミネラル不足 | 汗をかいた日、下痢のあと、お酒を飲んだ夜 |
| 冷え・血行不良 | 冬の明け方、冷房で足元が冷えたとき |
| 使いすぎ | 慣れない運動、長時間の立ち仕事や歩行 |
| 加齢による筋肉量の減少 | 年齢とともに頻度が増えます |
| 妊娠中 | お腹の重さと血流の変化で起こりやすくなります |
💊 薬剤師のポイント:夜中に多いのには理由があります
寝ている間は汗で水分が減り、体が冷え、足首が伸びた姿勢が続きます。ふくらはぎの筋肉が縮んだままの時間が長くなるため、ちょっとした刺激で一気につります。寝返りや、朝方の伸びをした瞬間に起こる方が多いのはこのためです。
つった瞬間にすること
あわてて足首を伸ばす方がいますが、それは逆です。縮んでいる筋肉をさらに縮めることになり、痛みが長引きます。
- つま先を手前(すね側)にゆっくり引く。これでふくらはぎが伸びます
- 自分で届かなければ、タオルを足の裏にかけて、両手で手前に引く
- ゆっくり。勢いよく引っぱると筋肉を傷めます
- おさまったらふくらはぎを温めて、やさしくさする
痛みが数日残ることがあります。強い痛みが続く、押すと激しく痛む、腫れや内出血があるときは肉離れを起こしている可能性があるので、整形外科を受診してください。
市販薬は「芍薬甘草湯」が中心です
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は、こむら返りに使われる代表的な漢方です。ツムラの番号でいうと68番で、市販ではコムレケアなどの名前で売られています。
漢方というと「じわじわ効く」印象があると思いますが、この処方は例外的に効き始めが速いのが特徴です。飲んで数分から十数分で楽になることがあり、つったときに飲む頓服(とんぷく)として使えます。
芍薬(しゃくやく)と甘草(かんぞう)という2つの生薬だけでできた、とてもシンプルな処方です。この単純さが、速さの理由でもあります。
【最重要】毎日飲み続けてはいけない理由
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
⚠️ 甘草(かんぞう)による「偽アルドステロン症」
甘草に含まれるグリチルリチン酸をとり続けると、体内のカリウムが減って偽アルドステロン症(ぎアルドステロンしょう)が起こることがあります。
症状はむくみ、血圧の上昇、体重増加、手足のだるさ、力が入らないなど。進むと立ち上がれないほど力が抜けることもあります。
芍薬甘草湯は、甘草の量が漢方の中でもとくに多い処方です。だからこそ速く効くのですが、毎日続けるのは向いていません。
「つらいから毎晩飲んでいます」という方に、私は必ず止めていただきます。つったときだけ、または「今夜はつりそうだ」というときだけにしてください。
とくに注意していただきたいのが、ほかの漢方と一緒に飲んでいる場合です。甘草は非常に多くの漢方に入っているため、知らないうちに合計量が増えます。
- 風邪に使う葛根湯(かっこんとう)にも甘草が入っています
- のどの桔梗湯(ききょうとう)、胃腸の安中散(あんちゅうさん)にも入っています
- 市販の漢方を2種類以上飲むときは、必ず薬剤師に確認してください
また、血圧の薬・利尿薬(尿を出す薬)・心臓の薬を飲んでいる方は、もともとカリウムが減りやすい状態です。芍薬甘草湯を使う前に、かかりつけの薬剤師にご相談ください。
つらない体をつくる
薬は「起きたとき」の対処です。回数を減らすには生活側で手を打つほうが確実です。
寝る前にふくらはぎを伸ばす
壁に手をついて、片足を後ろに引いてかかとを床につける。これを両脚30秒ずつ。研究でも、寝る前のストレッチで夜間のこむら返りが減ったと報告されています。いちばん手軽で、いちばん効きます。

水分とミネラルをとる
寝る前にコップ1杯の水。汗をかいた日は水だけでなく塩分も必要です。夏場や運動のあとは経口補水液が向いています。お酒を飲んだ夜はとくにつりやすいので、寝る前に水を飲んでください。→ 経口補水液とスポーツドリンクの違い
足を冷やさない
冷房の風が足元に当たっていないか、布団から足が出ていないかを見直してください。レッグウォーマーや靴下で足首を温めるだけで減る方がいます。冷えが強い方は、体質から整える漢方も選択肢になります。→ 冷え性の薬の選び方
💊 現場でよく聞く話
「毎晩つるので、寝る前に必ず飲んでいます」という高齢の方がいらっしゃいました。血圧の薬も飲まれていて、足のむくみが気になるとのこと。甘草の飲みすぎでむくみが出ていた可能性があり、主治医に相談していただきました。
効く薬ほど、続けたくなります。でも「効くから毎日」がいちばん危ない使い方です。
こんなときは受診を
⚠️ 病気が隠れていることがあります
①ほぼ毎晩つる②いつも同じ片脚だけ③しびれや力の入りにくさをともなう④歩くとふくらはぎが痛み、休むと治まる⑤足の色が変わる・むくみが強い⑥急に頻度が増えた
糖尿病、甲状腺の病気、腎臓の病気、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)、下肢の血管の病気などが背景にあることがあります。まずは内科へ。④は血管の病気を疑うサインです。
また、飲んでいる薬が原因のこともあります。利尿薬、一部のコレステロールの薬、ぜんそくの薬などで起こることがあるので、お薬手帳を持って薬剤師に相談してみてください。自己判断で薬をやめないでください。
よくある質問(FAQ)
Q. 芍薬甘草湯はどのくらいで効きますか?
A. 数分から十数分で楽になる方が多く、漢方の中では例外的に速い処方です。ただしつっている最中に飲んでも、飲み込む前におさまることが多いので、実際には「つりそうな予感がしたとき」「運動やお酒の前」に使うほうが現実的です。医師から予防目的で処方されることもありますが、市販薬で毎日続けるのは避けてください。
Q. 毎日飲んでも大丈夫ですか?
A. おすすめできません。甘草の量が多い処方なので、続けるとむくみ・血圧上昇・手足のだるさ・力が入らないといった症状(偽アルドステロン症)が出ることがあります。つったときだけにしてください。毎晩つるほどなら、それ自体が受診の理由になります。
Q. マグネシウムのサプリは効きますか?
A. 妊娠中の方では効果があったという報告がありますが、それ以外の方でははっきりしていません。試す価値はありますが、「これで治る」と期待しすぎないでください。とりすぎるとお腹がゆるくなります。腎臓の働きが落ちている方は自己判断でとらないでください。食事なら海藻、ナッツ、大豆製品に多く含まれます。
Q. 妊娠中でも使えますか?
A. 自己判断では使わないでください。妊娠中はこむら返りが起こりやすい時期ですが、市販薬を使う前に必ず産婦人科に相談してください。まずは寝る前のストレッチ、水分補給、足を冷やさないこと、横向きで寝るといった方法から試すのが基本です。→ 妊娠中・授乳中に使える市販薬
Q. つったあと、痛みが残ります。
A. 強くつったあとは数日痛みが残ることがあります。多くは自然に治まりますが、押すと激しく痛む、腫れている、内出血がある、歩きにくいときは肉離れを起こしていることがあるので整形外科へ。軽い痛みなら、温めて、無理に伸ばさず安静にしてください。
まとめ
- つった瞬間はつま先を手前にゆっくり引く。伸ばすと悪化します
- 市販薬は芍薬甘草湯。漢方には珍しく効き始めが速く、頓服向き
- 毎日は飲まない。甘草でむくみ・血圧上昇・脱力が起こることがあります
- ほかの漢方との重複に注意。葛根湯などにも甘草が入っています
- 予防は寝る前のふくらはぎのばし・水分とミネラル・足を冷やさない
- 毎晩つる/片脚だけ/しびれをともなうなら、病気が隠れていることがあります
あの痛みは、経験した人にしかわからないつらさです。薬でしのぎつつ、寝る前の30秒のストレッチから始めてみてください。それだけで回数が変わる方がたくさんいらっしゃいます。
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この記事を書いた人
メイ|現役薬剤師(調剤歴15年)
製薬会社の研究職から調剤薬局へ転職し、岩手で管理薬剤師を経験。現在は東京で3人の子どもを育てながら、施設在宅をメインにパート薬剤師として働いています。数千件の服薬指導で実際に受けたご質問をもとに、「難しい薬の知識をわかりやすく」をモットーに発信しています。
※本記事は薬剤師による一般的な情報提供を目的としており、個別の医療アドバイスではありません。気になる症状・服薬内容については必ず担当医・薬剤師にご相談ください。

