監修・執筆:薬剤師 メイ
調剤歴15年(製薬会社研究職→調剤薬局・管理薬剤師・在宅薬剤師)。3人の子を育てるママ薬剤師。服薬指導数千件の経験をもとに、正確でわかりやすい薬の情報を発信しています。|プロフィール詳細
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「熱中症になったとき、どの薬を飲めばいいですか」
この質問が増えるのは、毎年6月ごろからです。
先に、答えをお伝えします。
熱中症そのものに直接効く市販薬は、ありません。
でも「予防に使えるもの」「つらさをやわらげるもの」はあります。
正しく使えば回復を助けられますし、間違えると悪化させることもあります。そこをお伝えします。
熱中症に「効く薬」は存在しない——まず冷却・水分補給が最優先
熱中症は、体温を調節する働きが乱れて、体に熱がこもった状態です。
薬で体温を下げたり、失われた塩分を補ったりはできます。
でも、「熱中症を治す薬」は市販されていません。まず冷やす、水分を取る。これが先です。
応急処置の基本は以下の順番です。
- 涼しい場所に移動する(エアコンの効いた室内・日陰)
- 衣服を緩めて体を冷やす(首・脇・太ももの付け根に冷却剤)
- 水分と塩分を補給する(経口補水液が最適)
- 意識がなければすぐに119番
この応急処置をしながら、薬を「補助的に」使うのが正しい順番です。
経口補水液は「薬」ではなく「飲料」——でも熱中症対策の要になります
OS-1(大塚製薬)やアクアソリタ(味の素)などの経口補水液は、医薬品ではなく食品・医療用食品の区分ですが、熱中症対策で最も重要なアイテムです。
スポーツドリンクと何が違うの?
| 比較項目 | 経口補水液(OS-1) | スポーツドリンク |
|---|---|---|
| ナトリウム濃度 | 高い(約50mEq/L) | 低い(約20mEq/L) |
| 糖分 | 少なめ | 多め |
| 目的 | 脱水の治療・回復 | 運動中の水分補給 |
| 味 | 薄くて飲みにくい | 甘くて飲みやすい |
大量に汗をかいたとき、スポーツドリンクだけでは塩分が追いつかないことがあります。
しっかり脱水しているときは、OS-1のような経口補水液を選んでください。
ただし、腎臓病・心臓病・高血圧の方はナトリウムの過剰摂取になる危険があります。持病がある方は医師に相談してから使用してください。
解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン・イブプロフェン)は使っていい?
「熱が出たから解熱剤を飲む」は、風邪では正しい対応です。でも熱中症の発熱に解熱剤を使うことには注意が必要です。
熱中症にロキソニン・イブは使わないほうがいい
イブプロフェン(イブ・ナロンエースなど)やロキソプロフェン(ロキソニンSなど)には、胃への負担と腎臓への負担があります。
熱中症で脱水しているときにこれらを飲むと、腎機能障害を起こすリスクが高まります。
アセトアミノフェン(タイレノール・カロナール)はまだマシ
どうしても解熱剤を使いたいなら、アセトアミノフェン系(タイレノールA等)のほうが腎臓への影響は少ないです。ただし、熱中症の本質的な治療にはならないことを理解した上で使ってください。解熱剤で体温を下げても、体の熱放散が追いついていなければ再び上昇します。
塩分補給タブレット・塩飴は予防に有効
熱中症予防として、外出前・作業中に塩分補給タブレットや塩飴を使うのは効果的です。薬局で手軽に買えて、持ち運びやすく、子どもも使いやすいです。
ただし、これも腎臓病・高血圧の方は過剰摂取に注意が必要です。薬との飲み合わせが気になる場合は薬剤師に相談してください。
薬剤師として現場で見てきた「熱中症の怖いパターン」
いまも忘れられないことがあります。
「少し頭が痛いけど大丈夫」と言って帰られた高齢の患者さんが、翌日に救急搬送されました。
熱中症は、最初は「ちょっと疲れた」くらいにしか感じません。
そこから、急に悪くなります。とくに高齢の方は暑さを感じにくく、自覚がないまま重くなることが多いんです。
「薬を飲んで様子を見る」ではありません。
まず冷やす。水分を取る。それでも戻らなければ、迷わず受診。
これが、薬剤師としての正直なところです。
熱中症で使える市販薬・使えない市販薬の一覧
「熱中症になったとき、ドラッグストアで何を買えばいい?」という疑問に直接答えます。
| 市販品・薬の種類 | 使える? | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| 経口補水液(OS-1・アクアソリタ) | ◎ 積極的に使う | 失われた水分・塩分を効率よく補給。脱水回復に最優先 |
| 塩分補給タブレット・塩飴 | ○ 予防に使う | 外出前・作業中の予防に有効。治療目的には不十分 |
| 冷却シート・冷感スプレー | ○ 補助的に使う | 首・脇・鼠径部を冷やす補助として有効。保冷剤の方が効果は高い |
| アセトアミノフェン(タイレノールA) | △ 慎重に使う | 解熱目的で使うなら、NSAIDs系よりはマシ。ただし根本的な治療にはならない |
| ロキソニンS・イブ(NSAIDs系) | ✕ 避けるべき | 脱水中は腎機能障害リスクが高まる。熱中症時には使わない |
| 整腸剤・胃腸薬 | △ 症状による | 熱中症による嘔気・下痢に使うことはあるが、まず脱水の改善を優先 |
熱中症対策でドラッグストアで買うべきもの
夏の熱中症対策として、あらかじめ用意しておくと便利な市販品をまとめます。
- 経口補水液(OS-1、アクアソリタなど):家や職場に常備しておくと安心。1本200〜250円程度
- 塩分補給タブレット・熱中症対策飴:持ち運びやすく、外出時の予防に便利
- 冷却シート・保冷剤:首や脇を冷やすために使用。ネッククーラーも有効
- 体温計:熱中症の重症度(体温40度以上で緊急)を確認するために重要
よくある質問(FAQ)
Q. 経口補水液は1日どのくらい飲めばいいですか?
A. 軽い脱水のときは、一気に飲まず、少量ずつこまめにが基本です。目安として、大人ならコップ1杯程度を数回に分けて、様子を見ながら続けます。すでに意識がはっきりしない・自分で飲めないというときは、無理に飲ませずすぐに救急要請してください。
Q. 経口補水液が手に入らないとき、家で作れますか?
A. 応急的にはつくれます。水1リットルに砂糖40g(大さじ4杯半)と塩3g(小さじ1/2)が目安です。ただし家庭でつくったものは濃度が正確ではないため、あくまで市販品が手に入るまでのつなぎと考えてください。持病がある方や小さなお子さん、高齢の方には市販の製品をおすすめします。
Q. 高血圧や腎臓の病気があっても、経口補水液を飲んでいいですか?
A. 注意が必要です。経口補水液にはナトリウム(塩分)とカリウムがしっかり入っているため、塩分制限をしている方や腎臓の働きが落ちている方、心不全のある方では負担になることがあります。かかりつけの医師から水分・塩分の指示を受けている方は、その指示を優先してください。判断に迷うときは薬剤師にご相談ください。
まとめ:熱中症と市販薬の使い方
- 熱中症を直接治す市販薬はない——まず冷却・水分補給が最優先
- 経口補水液(OS-1等)が脱水回復に最も効果的
- 解熱剤(ロキソニン・イブ)は脱水中に使うと腎臓への負担大——使うならアセトアミノフェン系を少量
- 塩分補給タブレット・塩飴は予防に有効
- 意識障害・嘔吐・高体温(40度以上)があれば即119番
市販薬に頼りすぎないでください。
大事なのは、早めの応急処置と、ためらわない受診です。
薬の飲み合わせや使い方で不安なことがあれば、近くの薬剤師に声をかけてくださいね。
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この記事を書いた人
メイ|現役薬剤師(調剤歴15年)・FP2級
製薬会社の研究職から調剤薬局へ転職し、岩手で管理薬剤師を経験。現在は東京で3人の子どもを育てながら、施設在宅をメインにパート薬剤師として働いています。数千件の服薬指導で実際に受けたご質問をもとに、「難しい薬の知識をわかりやすく」をモットーに発信しています。
※本記事は薬剤師による一般的な情報提供を目的としており、個別の医療アドバイスではありません。気になる症状・服薬内容については必ず担当医・薬剤師にご相談ください。

