「市販薬は処方薬より弱いから、多少自己流でも大丈夫」——そう思って使っていませんか?実は私自身、薬剤師として絶対にやらないと決めていることがいくつかあります。現場で15年間、患者さんの服薬状況を見続けてきた経験から、「これだけは知っておいてほしい」と強く感じるNG行動を6つにまとめました。心当たりがある方は、ぜひ今日から見直してみてください。
この記事は、処方薬を飲んでいない方にも関係があります。「市販薬だから安心」という思い込みが、思わぬ健康被害につながることがあります。
NG① 用量を「少し多め」に飲む
「早く効かせたい」「体が大きいから少し多めでいいだろう」——こうした理由で、表示されている用量より多く飲んでしまう方が意外と多くいます。しかし薬剤師として、これは絶対にやりません。
市販薬に表示されている用量は、有効性と安全性のバランスを考えて設定されています。特に注意が必要なのが、アセトアミノフェン(タイレノールや風邪薬の多くに含まれる成分)です。適切な量では安全に使えますが、過剰摂取では重篤な肝障害を引き起こすリスクがあります。「少し多め」のつもりが、取り返しのつかない結果になりかねません。
⚠️ 鉄則
市販薬の用量は「体格」ではなく「年齢」で区分されています。体が大きくても、表示の用量を超えることは絶対に避けてください。
NG② 複数の市販薬を同時に飲む
風邪をひいたとき、「風邪薬+頭痛薬+栄養ドリンク」を一度に飲んでいませんか?それぞれ別の商品だから大丈夫——というのは大きな誤解です。
市販薬には、複数の成分がすでに配合されています。風邪薬には解熱鎮痛剤・抗ヒスタミン薬・カフェインなどが入っていることが多く、別に鎮痛剤や栄養ドリンクを追加すると、同じ成分が重複して過剰摂取になってしまいます。
現場エピソード
「風邪薬・頭痛薬・栄養ドリンクを毎日飲んでいます」とおっしゃった患者さん。成分を確認すると、アセトアミノフェンとカフェインが3種類に重複して含まれていました。「別々の薬だから重複しないと思っていた」というお言葉が印象的でした。
飲み合わせが心配なときは、購入前に薬剤師に相談することをおすすめします。成分表示の「効能・効果」だけでなく、「成分・分量」の欄まで確認する習慣をつけてください。
| 重複しやすい成分 | 含まれやすい市販薬の種類 | 過剰摂取のリスク |
|---|---|---|
| アセトアミノフェン | 風邪薬・鎮痛剤・解熱剤 | 肝機能障害 |
| カフェイン | 風邪薬・鎮痛剤・栄養ドリンク | 動悸・不眠・胃腸障害 |
| 抗ヒスタミン薬 | 風邪薬・鼻炎薬・酔い止め・睡眠補助薬 | 過度の眠気・口の渇き |
| イブプロフェン・ロキソプロフェン | 風邪薬・鎮痛剤 | 胃腸障害・腎機能への影響 |

NG③ 「症状が出たら飲む」を繰り返して長期常用する
頭痛が出るたびに鎮痛剤を飲む、胃が荒れるたびに胃薬を飲む——この「症状が出たら飲む」を繰り返している方は要注意です。市販薬はあくまで短期間の使用を前提に設計されています。
特に気をつけてほしいのが、鎮痛剤の長期連用です。頭痛を抑えるために飲み続けると、逆に薬が頭痛の原因になる「薬物乱用頭痛」を招くことがあります。月に10日以上鎮痛剤を飲んでいる方は、一度医師への相談をおすすめします。
また、市販の胃薬で症状を抑え続けることで、胃潰瘍や逆流性食道炎などの本来の病気を見逃してしまうケースも現場では少なくありません。症状が5〜6日以上続く場合は、必ず医療機関を受診してください。
NG④ 処方薬と一緒に飲む(確認せずに)
処方薬を飲んでいる方が、確認せずに市販薬を追加するのは非常に危険です。市販薬の成分が処方薬と重複したり、相互作用を起こしたりするケースが多くあります。
特に注意が必要な組み合わせを挙げると、血圧の薬を飲んでいる方が、塩酸プソイドエフェドリンなどの血管収縮成分が入った市販の鼻炎薬・風邪薬を飲むと血圧が上がりやすくなること、抗凝固薬(ワーファリンなど)を飲んでいる方がイブプロフェン・アスピリンなどのNSAIDs系鎮痛剤を飲むと出血リスクが高まること、などがあります。
処方薬を飲んでいる方が市販薬を選ぶときは、必ずお薬手帳を持参して薬剤師に相談してください。飲み合わせについてはこちらの記事も参考にしてください。
NG⑤ 「前回もらった薬が残っている」で使い回す
以前処方された薬や、以前使った市販薬が残っているからといって、同じような症状のときに使い回すのは危険です。症状が似ていても、原因が違えば薬の効果がないどころか逆効果になることがあります。
現場エピソード
「去年の風邪薬が残っていたので飲んだけど全然効かなかった」という患者さん。よく聞くと、今回は細菌性の感染症で、市販の風邪薬では対処できない症状でした。結果的に受診が遅れてしまったケースです。「似た症状だから同じ薬でいい」という思い込みが、受診の遅れにつながることがあります。
また、薬には使用期限があります。開封後の目薬は1ヶ月、錠剤や粉薬も開封後は湿気や温度の影響を受けて品質が変わることがあります。「もったいない」という気持ちはわかりますが、期限切れ・開封済みの薬の使い回しは避けてください。残った薬の正しい処分は、かかりつけ薬局にご相談ください。
NG⑥ 子どもに大人用の市販薬を飲ませる
「大人用を少量にすれば大丈夫」と思っている保護者の方がいますが、これは誤りです。子ども用と大人用は、単に量が違うだけでなく、成分自体が異なる場合があります。
特に注意が必要なのがアスピリンです。アスピリンは15歳未満の子どもへの使用が禁忌とされており、ウイルス感染時に使用するとライ症候群という重篤な病態を引き起こす可能性があります。市販の鎮痛剤や風邪薬の中にアスピリンが含まれているものがあるため、子どもへの使用前に必ず成分を確認してください。
子どもの解熱・鎮痛には、アセトアミノフェン(子ども用)が推奨されます。年齢・体重に合った用量を守り、不安なときは必ず薬剤師や小児科医に相談してください。
まとめ:市販薬の「自己流」が一番危ない
- 用量は必ず守る——「少し多め」は過剰摂取と同じリスク
- 複数の市販薬を同時に飲むときは成分の重複を必ず確認する
- 5〜6日以上症状が続くなら市販薬で粘らず受診する
- 処方薬を飲んでいるときは市販薬の追加を薬剤師に相談する
- 以前の薬の使い回しは症状が似ていても避ける
- 子どもには必ず子ども用を——大人用を少量にするのはNG
「市販薬だから大丈夫」という安心感が、思わぬ健康被害の入り口になることがあります。迷ったときは自己判断せず、ドラッグストアや薬局の薬剤師に声をかけてください。相談は無料ですし、それが薬剤師の大切な仕事のひとつです。
あわせて読みたい:市販サプリを買う前に確認すべき5つのこと / お薬手帳の正しい使い方と薬剤師に相談する7つのタイミング
市販薬の選び方に不安がある方へ
「この市販薬を飲んでも大丈夫?」と思ったら、ぜひかかりつけ薬局の薬剤師に相談してください。お薬手帳を持参いただくと、処方薬との飲み合わせもその場で確認できます。
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この記事を書いた人
メイ|現役薬剤師
調剤薬局に勤続15年の現役薬剤師。服薬指導と医薬品情報管理(DI)を専門とし、これまで数千件以上の服薬指導に携わってきました。「難しい薬の知識をわかりやすく」をモットーに、現場のリアルな経験をもとに発信しています。→ プロフィール詳細はこちら
※本記事は薬剤師による一般的な情報提供を目的としており、個別の医療アドバイスではありません。気になる症状・服薬内容については必ず担当医・薬剤師にご相談ください。
