2025年12月10日放送のNHK『クローズアップ現代』にご出演された横山広美教授(東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構/学際情報学府 教授)。
番組テーマ「ノーベル賞日本人ダブル受賞へ 研究の最前線は?課題は?」において、彼女が語ったのは、単なる研究手法ではなく、「日本の科学界が抱える構造的な課題」と「社会との信頼関係」でした。
物理学の最前線で研究を極めた理学博士でありながら、科学と社会の関係を専門とする人文社会科学へと転身した横山教授。
なぜ彼女の視点が、ノーベル賞を生む土壌を築く鍵となるのか?
「科学的助言」という耳慣れないテーマに隠された、科学の未来を左右する本質的な議論を、そのユニークな学歴・経歴とともに深掘りします。
横山広美のプロフィール
| 項目 | 内容 |
| 氏名 | 横山 広美(よこやま ひろみ) |
| 現職 | 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 教授 / 学際情報学府 教授 |
| 専門分野 | 科学技術社会論(STS) |
| 主な研究関心 | 科学と社会の信頼関係、科学的助言(サイエンス・アドバイス)のあり方、先端科学技術における倫理的・法的・社会的問題(ELSI) |
| 資格・学位 | 博士(理学) |
横山広美の学歴
横山教授は、科学ジャーナリストを志した経緯から、科学の深い知識を得るために物理学を専攻しました。
| 年 | 内容 |
| 2004年9月 | 東京理科大学大学院 理工学研究科 物理学専攻 修了(連携大学院:高エネルギー加速器研究機構)博士(理学)取得 |
| 大学院時代 | 素粒子物理学実験(ニュートリノ研究など)に従事 |
| 学部 | 東京理科大学 理工学部 物理学科 卒業 |
横山広美の経歴
横山教授のキャリアは、科学の「当事者」としての経験と、社会との「橋渡し役」としての活動が特徴です。
職歴・教職
| 年代 | 内容 |
| 2017年4月 – 現在 | 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 教授 / 学際情報学府 教授 |
| 2007年4月 – 2017年3月 | 東京大学大学院理学系研究科 准教授 |
| 2005年1月 – 2007年3月 | 総合研究大学院大学葉山高等研究センター 上級研究員 |
経歴の転換点
博士(理学)を取得し、素粒子物理学の最前線にいた横山教授は、博士号取得後に専門を科学技術社会論へ転向。
これは、科学者が何を考え、研究が社会とどのように関わるのかという「科学と社会の関わり」に強い関心を持ち、科学と社会の双方に精通した「翻訳者」となる道を選んだためです。
主な社会貢献・役職
- 独立行政法人国立高等専門学校機構 理事
- 東京大学出版会 理事
- 東京大学(本部)広報室長・広報戦略企画室長(過去)
- 科学技術社会論学会 理事
主な受賞
| 年 | 賞の名称 |
| 2022年 | 第5回東京理科大学物理学園賞 |
| 2015年 | 科学技術社会論学会 柿内賢信研究奨励賞 |
| 2007年 | 日本科学技術ジャーナリスト会議 科学ジャーナリスト賞 |
科学的助言(サイエンス・アドバイス)の深掘り:信頼のガバナンス
『クローズアップ現代』のテーマであるノーベル賞につながる基礎研究の土台を支える上で、横山教授が最も重要視するのが、科学的助言のあり方です。
これは、科学が社会から安定した支援と信頼を得るための重要なメカニズムです。
科学的助言とは何か
科学的助言とは、科学的な知識やエビデンスを、政府や政策決定者に対して、迅速かつ公正に提供するプロセス全体を指します。危機対応や長期的な国家戦略に不可欠です。
提言の核心:信頼とガバナンスの設計
横山教授は、科学と政策の関係を健全に保ち、社会の信頼を確保するためには、以下のガバナンス(統治)の仕組みが不可欠であると主張しています。
- 不確実性の透明化: 科学的知見には常に限界があることを受け入れ、「今わかっていること」と「わかっていないこと」を明確に分けて情報公開することが、長期的な信頼の基盤となります。
- 意見の多様性の確保: 助言が特定の個人の意見に偏ることを避け、幅広い専門家の知見を公正に集約し、意見の多様性を政策決定のプロセスに組み込むべきです。
- 「科学」と「政治」の明確な境界: 科学は根拠と可能性を提供し、最終的な価値判断は政治が行うという役割を明確に線引きすることが、科学が政策的に利用されるリスクを防ぎます。
研究の深掘り:科学技術社会論(STS)が目指すもの
横山教授の専門である科学技術社会論(STS)は、科学技術が社会や文化、倫理とどのように相互作用するかを探る学問です。
教授は、ノーベル賞を生むような最先端の研究課題に対し、倫理的・法的・社会的問題(ELSI)の視点からアプローチし、技術の導入前に社会的な議論を促す必要性を訴えています。
これにより、研究が社会から孤立せず、より開かれた形で発展する道筋を探求しています。
東大教授・横山広美の異色な経歴・プロフィールと科学的助言【クローズアップ現代】まとめ
横山広美教授は、素粒子物理学の知識という揺るぎない理系の視点と、科学技術社会論という人文社会科学の視点を併せ持つ、現代の科学界にとって極めて重要な存在です。
教授の活動は、単に研究成果を伝えるだけでなく、「科学を支える社会の仕組み」そのものを問い直し、透明で信頼できる関係を構築することにあります。
この取り組みこそが、日本の科学が長期的なビジョンを持ち、世界的な大発見を生み出し続ける土壌を豊かにしていく鍵となります。
最後までお読みいただきありがとうございました。

