『さばの缶づめ、宇宙にいく』
まだ小坂先生が新米教師だったころから、この壮大なプロジェクトは始まります。
そして、12年間にわたり研究や改善を続け、関わった生徒は300人以上。
2018年11月、宇宙日本食として認証され、「夢って叶うんだな」とつぶやく小坂先生。
そんな生徒の意志を尊重し、自主性に委ねて宇宙食の開発をしてきた小坂先生の経歴を調べましたのでご紹介します。
また、さば缶が宇宙食となり、その次に目指す”災害食”にもなりうるのか?についても調べてみました。
小坂康之先生のプロフィール・経歴
- 名前:小坂 康之(こさか やすゆき)
- 通称:へこし博士
- 生年月日:1977年(詳細は不明)
- 出身:神奈川県
- 学歴:東京水産大学(現・東京海洋大学)水産学部卒業
福井県立大学大学院生物資源学研究科博士課程修了 - モットー:楽しいから学ぶんだ
- 経歴:1977年神奈川生まれ。1996年神奈川県立川和高等学校卒業。1997年東京水産大学水産学部入学。卒業後、2001年福井県立学校教員に採用。4月から小浜水産高等学校に勤務。教職の傍ら5年かけて福井県立大学大学院生物資源学研究科博士課程を修了する。2006年、教育施設で2例目となるHACCP(ハサップ:食品安全衛生システム)を取得。小浜名物のさばをつかった宇宙食の開発を始める。2013年小浜高校は進学校の福井県立若狭高等学校と統合し、同校の海洋科学科となる。2018年「サバしょう油味付け缶詰」が宇宙日本食として認証。2020年宇宙飛行士の野口聡一さんが実食。2022年「若狭宇宙缶」としてさば缶を商品化。
小坂康之先生の勤務先
小坂康之先生は、福井県立若狭高校で教師をしています。
若狭高校海洋科学科の前身である小浜水産高校は、小坂先生が教職についたときには大変荒れていたそうです。
いわゆる「ヤンキー」ばかりだったと、「当時は泣く子も黙る荒れた不良校だった」と小坂先生は振り返っています。
授業をしてもほとんどが寝ている…。
小坂先生は、もともと海が大好きで、海に関わる仕事がしたいと東京海洋大学に進学し、教員免許を取得。
全国でも3人しか応募がなかった憧れの水産学校にめでたく就任したのに、まともに授業もできない。
小坂先生、入ってびっくりしたそうです。
小坂先生は、神奈川生まれ・東京の大学出身で、福井の地元民からは『東京から来たお坊ちゃん』です。
甘く見られていたんですね。
以前の水産高校の先生は、子どもたちの教育以外にも、
- 技術の伝承や開発
- 地域の問題解決
- 水産業に貢献すること
これらも”仕事”としてやっていました。
小坂先生はまず、自身がへしこづくりを教わりに出ます。
へしことは、福井県を代表おする発酵食品で、主にさばをぬか漬けにしたものです。
そして、若狭高校の生徒たちは小坂さんに連れられて、どんどん外へ出て行くようになります。
教室での受け身の授業と違って、港で現場を体感し、へしこ職人と話し、一緒にへしこの研究をする。
もう子供たちは刺激を受けて毎日新鮮!
小坂先生は、生徒たちの目がキラキラし始めたと話しています。
実習とか実験って、座学に比べて楽しいですよね。
しかも、海に興味があって入学した水産学校の生徒です。
港で捨てられる魚の存在を知り、社会課題にも取り組みます。
そして、小坂先生の活動が先進的な教育モデルとして注目され、生徒たちも海外の人とやり取りし、グローバルな視点で水産業さらに環境問題について考えるようになります!
すごい成長ですね。
受け身ではなく、生徒が自主的に考えて取り組める環境を用意するのが、教師の役目なのかもしれません。
小坂先生は、文部科学大臣優秀教職員、福井県優秀教職員、授業名人、第54回中日教育賞の受賞者の一人に選ばれました。
小坂先生のこの画期的な授業は今も続いています!
小坂康之先生と生徒の挑戦:さば缶を宇宙食へ
「宇宙食、つくれるんちゃう?」という生徒の一言でこのプロジェクトは始まります。
生徒が「宇宙食、つくれるんちゃう?」と言ったのは、小坂先生がHACCPを取得したからです。
小坂先生は生徒たちと研究課題に打ち込みます。
やんちゃな生徒たちも積極的に参加していたそうです。
そのときのテーマは『定置網漁業で利用されていない魚をつかった新商品開発』。
そして、通常の実習でさば缶を年間数万個と大量に製造することにしました。
水産商品の販売にはHACCP(食品の安全を確保するための衛生管理手法)の取得が必要です。
HACCP取得は簡単ではありません。
小坂先生と生徒たちは約4年かけて2006年にHACCPを取得します!
全国の水産高校でのHACCP取得は2番目と大変な快挙です!
では、一番最初にHACCPを取得した高校は?と調べたのですが、わかりませんでした。
ちなみに、水産だけではなく、畜産高校でもHACCPを取得しています!
- 2014年:愛媛県立宇和島水産高等学校
- 2019年:群馬県立勢多農林高校
- 2020年:石川県立翠星高等学校
- 2022年:宮城県気仙沼向洋高等学校
- 2024年:京都府立農芸高等学校
などでHACCPを取得しています。
そして、このHACCP取得を小坂先生は生徒に報告します。
同時に、”HACCPはもともとNASAが宇宙食のために作った衛生基準”だということを伝えると、冒頭の「宇宙食、つくれるんちゃう?」につながります。
すごい気づきですね!
そしてこの後の小坂先生の行動力もすごいんです!
JAXAやNASAにメールを送り、JAXA職員を招いて宇宙食の研究を重ねます。
はじめは缶詰ではなくJAXA職員に勧められた、キャラメルやレトルトパックを研究していました。
その後、転機が訪れます。
2013年、若狭高校と小浜水産高校が統合、JAXAが宇宙日本食認証制度を発表します。
そもそもJAXAがキャラメルやレトルトパックを勧めたのは、当時、日本人が搭乗していたスペースシャトルでは缶詰の宇宙食搭載は難しいと言われていたから。
それが、JAXAが宇宙日本食認証制度を発表したことで、可能性がでてきました!
高校統合後の1期生が、宇宙日本食の公募を見て『先輩たちが始めたサバ缶で宇宙日本食を目指したい』
と応募し、小坂先生と生徒の研究が始まります。
小坂先生は、毎年1個ずつ生徒に課題を出し、少しずつクリアしていったそうです。
小坂先生は水産大学で食品加工を専門に学んでいたので、先生が研究をぐいぐい引っ張っていったらもっと早くに実現していたでしょう。
でも、「宇宙食開発は生徒の探究学習の一環」として生徒の自主性に委ねるんです。
そして、12年の歳月と300人以上の生徒が研究に携わり、33番目の宇宙日本食が誕生します!
それが、「サバ醤油味付け缶詰」です。
小坂康之先生の次なる目標
2022年には「宇宙鯖缶地上化計画」をテーマにしています。
宇宙サバ缶を地域の特産土産として販売し、社会貢献をしたいと生徒たちは考えています。
オリジナル品は学校で製造するため、製造数が制限され、さらに1缶当たり2000円と高額になってしまいます。
それでは流通が厳しいので、小浜市の地元企業である福井缶詰、福井物産とチームを組むことにしました!
それが、宇宙日本食に認定されたサバ缶と同じ製法で味もほぼ同じ「若狭宇宙鯖缶」です。
小浜名産”よっぱらいさば”ではなく、”ノルウェー産のさば”ですが、とろみをつけるのに葛を使ったり、しょう油や砂糖などの配合はオリジナル品と限りなく一緒です。
そして値段は、一缶700円!
『若狭宇宙鯖缶』の企画・デザイン・味・価格・販路など、若狭高校の生徒が考えています。
売り上げの一部は高校に還元され、その資金をもとに研究をさらに進めます。
商流を高校生で体験、実践してるんです!
すごい取り組みですよね。
でも、ここで終わりじゃないのが、小坂先生率いる若狭高校の生徒たちです。
今度は”非常食”に取り組んでいます!
災害時の避難所は宇宙船の環境と似ているそうです。
どちらも、食べられるものが限られ、調理方法に制約がありますね。
常温保存が可能で、長期間保存できないといけない点も同じです。
宇宙日本食は56品目、日本災害食は281品目認証されています(2025年5月現在)。
宇宙日本食、少ないですね。
制限が似ているこの食品項目、宇宙日本食を日本災害食に代替できるのでは?
その逆もまた、可能では?
ということで、2022年に、宇宙日本食に認証された食品は日本災害食に比較的容易な審査だけで認証を受けられるようにしました。
JAXAと日本災害食学会は、今度は日本災害食を宇宙日本食に認証される際にも簡単にできないかと模索しています。
若狭宇宙鯖缶が非常食であったら嬉しいですね。
高たんぱく質で食べ応えもあって、災害時にはごちそうです。
ぜひ、こちらも製品化をしてほしいですね。
プロジェクトX
5月31日 20:00~ 『新プロジェクトX 廃校寸前からの逆転劇〜高校生と熱血先生の宇宙食開発〜』に小坂康之さんが出演します。
12年の歳月をかけて宇宙に行った鯖缶!
熱血先生・小坂康之さんと生徒たちの研究が紹介されます。
年間数百缶しか製造できない貴重な鯖缶。ぜひ食べてみたいですねぇ。
まとめ
小坂先生の経歴
1977年神奈川生まれ。1996年神奈川県立川和高等学校卒業。1997年東京水産大学水産学部入学。卒業後、2001年福井県立学校教員に採用。4月から小浜水産高等学校に勤務。教職の傍ら5年かけて福井県立大学大学院生物資源学研究科博士課程を修了する。2006年、教育施設で2例目となるHACCP(ハサップ:食品安全衛生システム)を取得。小浜名物のよっぱらいさばをつかった宇宙食の開発を始める。2013年小浜高校は進学校の福井県立若狭高等学校と統合し、同校の海洋科学科となる。2018年「サバしょう油味付け缶詰」が宇宙日本食として認証。2020年宇宙飛行士の野口聡一さんが実食。2022年「若狭宇宙缶」としてさば缶を商品化。
宇宙へ行った”サバしょう油味付け缶詰”とそっくりな、大量生産を可能とした『若狭宇宙缶』を福井物産で取り扱っています!
ご興味のある方はどうぞ!
これからも小坂康之先生と若狭高校の生徒の活躍が楽しみですね!