追手門学院大学心理学部の教授である本田秀仁(ほんだ ひでひと)氏は、認知科学と意思決定科学を専門とする第一線の研究者です。
情報が氾濫し、AIが急速に進化する現代社会において、「人間ならではの判断」や「集団における知恵の活かし方」を科学的に解き明かす研究で知られています。
その研究は、日常の些細な選択から組織の重大な決断に至るまで、私たち人間の心の働きと行動の根源に迫るものであり、テレビ番組『ホンマでっか!?TV』の評論家として、その知見を社会に広く還元しています。
その学術的な背景と、専門分野である「意思決定科学」の核心に迫ります。
本田秀仁のプロフィール・経歴:確かな学術的基盤
本田氏は、日本のトップクラスの教育機関で専門的な知識と研究スキルを磨き、現在は関西を拠点に教育・研究活動を続けています。
| 項目 | 詳細 |
| 主な肩書 | 追手門学院大学 心理学部 教授 |
| 専門分野 | 認知科学、意思決定科学、ヒューリスティックとバイアス、集合知 |
| 学位 | 博士(学術) |
| 推定年齢 | 40代半ば(1998年慶應義塾大学入学時期からの推定) |
| メディア出演 | 『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)意思決定評論家 |
本田秀仁の専門分野:非合理性に見る人間の「適応的合理性」
本田氏の研究の根幹をなすのは、意思決定科学です。
これは、人間が複数の選択肢の中から一つを選び出す過程を、心理学、経済学、認知科学の手法を用いて分析する学問であり、その最大のテーマは「人はなぜ、不合理な判断をするのか?」という問いにあります。
1. 「賢い間違い」としてのヒューリスティックとバイアス
伝統的な合理性モデルでは、人間は論理的に判断するはずとされていました。
しかし実際には、私たちは限られた時間、情報、そして認知資源の中で、ヒューリスティック(経験則や思考の近道)を使って迅速に判断します。
- ヒューリスティックの役割: 日常の多くの場面で効率的に判断を下す上で非常に役立ちます。
- 認知バイアスの発生: しかし、この「近道」が、判断を歪ませる認知バイアスを生む原因となります(例:アンカリング効果、コミットメントの増大)。
本田氏の研究は、この一見「非合理的」に見える判断こそが、特定の環境下では生存や適応に役立つ「適応的合理性(Adaptive Rationality)」を持っていると捉える点にあります。
彼は、人間の不完全な判断を「間違い」として断じるのではなく、「人間らしさ」を形づくる知恵として探求しています。
研究テーマの例:
- 速さと正確さのトレードオフ: 判断の「速さ」と「正確さ」は反比例しがちですが、限られた認知資源の中で、最も効率よく高い正確さを維持できる「適度な思考時間」の存在を、資源合理的分析(資源の制約を考慮した合理性分析)の枠組みで探求しています。
- バイアスの応用: 人が最初に提示された数値(アンカー)に判断が引きずられるアンカリング効果を、逆手に取り、車両の速度超過を減少させるナッジ手法への応用など、実社会への還元を目指しています。
2. 多様な認知特性への深い理解
本田氏は、不確実な情報や確率的な信念に関する意思決定の研究において、自閉スペクトラム症(ASD)を持つ人々と定型発達者との比較研究も行っています。
言語的な確率表現(例:「たぶん」「おそらく」)が意思決定に与える影響や、不確実性の理解の違いを分析することで、個人差が意思決定プロセスにどう反映されるかを深く考察しています。
この研究は、人間の認知の多様性を理解し、情報提供や判断支援のあり方を考える上で重要な知見を提供しています。
『ホンマでっか!?TV』での解説と社会への貢献
専門的な研究活動に加え、本田氏は『ホンマでっか!?TV』の「意思決定評論家」として出演することで、専門知見を社会に広く還元しています。
日常の「判断の落とし穴」の解説例
番組では、本田氏の専門知識が、夫婦関係や日常生活の具体的な問題に適用されます。
| テーマ | 意思決定の視点 | 解説の要点(推測) |
| パートナー関係 | 情報共有の意思決定 | 「言わなくても分かって!」という要求は、お互いの認知(情報・経験)が異なる以上、脳科学的に不可能。良い意思決定のためには、言語化による情報共有という意識的な判断が不可欠。 |
| 家庭内のルール | ルールの柔軟性 | ルールは一種のヒューリスティックだが、固定しすぎると視野狭窄を引き起こし、家庭全体の快適さという最終目標を見失う。柔軟な意思決定こそが円満につながる。 |
本田氏は、このように「合理的であるべき」という思い込みが、かえって人間関係や幸福度を損なうメカニズムを、意思決定科学の視点からわかりやすく解説しています。
本田秀仁が語るAI時代における「集合知」の重要性
現代社会における本田氏の重要な研究テーマの一つが集合知(Collective Intelligence)です。
組織の「知恵」を活かす仕組み
本田氏は、単に多数決で意見を集めても集合知は達成されず、意見の「多様性」が確保されていることが不可欠であることを指摘しています。
異なる視点や情報を持つ人々が議論することで、個々人のバイアスが打ち消され、より正確な判断に至るというメカニズムを検証しています。
これは、組織のリーダーに、多様な視点を集め、それを尊重する仕組みをデザインする重要性を示唆しています。
人とAIの協働における意思決定
さらに、本田氏はAIの進化を見据え、人とAIが協働する場での意思決定プロセスにも焦点を当てています。
医療現場や金融分野など、専門的な判断が求められる場でAIからの情報を人間がどのように評価し、最終的な判断を下すのかを検証することで、AIを道具として活用しつつ、人間の責任と倫理的な判断を担保する方法を研究しています。
本田秀仁の主な著作にみる意思決定観
本田氏の研究成果は、以下の著書に集大成されています。
- 『越境する認知科学7 よい判断・意思決定とは何か-合理性の本質を探る』(共立出版):意思決定の合理性の基準を再定義し、人間の判断の多様性と賢さを探求した著書。合理性の基準を固定されたものではなく、環境や目的によって変化する流動的な概念として捉えることが、現代の意思決定を理解する鍵であると主張しています。
意思決定評論家・本田秀仁の経歴・プロフィールまとめ【ホンマでっか!?TV】まとめ
本田秀仁氏の研究は、「人間は完璧な合理性を持つわけではない」という現実を深く受け入れつつも、その「不完全さ」を武器に変える視点を提供しています。
東京工業大学大学院で培った学術的な厳密さと、追手門学院大学での心理学・認知科学に基づいた人間理解は、彼が現代の複雑な世界で、個人や組織が「賢い判断」を下すための羅針盤を提供していることを示しています。
彼の研究を通じて、私たちは、自分自身の判断の限界を知り、その上でいかに最善の選択を追求できるのかを学び続けることができるのです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
