「ロキソプロフェンはわかるのに、棚にある薬の名前が一つもわからない……」
薬局初日、調剤室で立ち尽くした私の姿です。 研究所で5年2ヶ月、最新のデータを扱っていたはずの私は、現場では「薬の名前すら知らない初心者」でした。
結婚を機に、残業の多い研究職から調剤薬局へ。そこで待ち受けていたのは、想像以上の知識のギャップと再勉強の毎日でした。
異業種からの転職を考えている薬剤師の方へ。私の失敗と克服の記録が、一歩踏み出す勇気になれば幸いです。
1. 結婚を機に、5年2ヶ月務めた研究職を辞めた理由
研究職時代の働き方
- 残業の多さ
- 実験のスケジュールに縛られる毎日
まさにこれ!
研究職は計画書を作成し、その通りに進めて報告書を仕上げる。
これの繰り返しの日々でした。
複数の実験を同時並行して行うことがほとんどで、チームで研究をしていますが、実働部隊だった私は実験・実験の日々。
計画書と報告書の仕上げはチームリーダーがやってくれますが、計画書にのせる詳細なスケジュールや実験器具の手続き、そして実験結果のデータ解析と分析は実働部隊がやります。
実験室にこもる日々。
外の天気も知らない日もありました。
昼休憩が取れない日もありました。
休みは非常に取りにくく、実働部隊が一人でも欠けたら実験延期。
そして後日、すでに実験が入っている日に延期した試験もむりやりねじ込む始末・・・。
健康で体力もあった自分の体が憎らしくもありました。
結婚後の生活を考えキャリアチェンジを決意「より柔軟に働ける環境」を求めて
研究職は、徹夜勤務も経験するほど過酷な労働環境でした。
結婚したら家事をするのは女性と思っていた私は、これではとてもできないと思いました。
現代でしたら、家事はパートナーと協力して分担するものですが、当時の私はパートナーに相談しませんでした。
むしろ、パートナーからは結婚後も働いて欲しいし、家事は苦手だから一切やりたくないと言われました。
なので、パートナーがいる岩手県に引っ越す際、岩手県にある研究所への転勤も提示されましたが断りました。
実験をすることはとても楽しかったのですが、とにかく仕事が第一で家のことができなかった自分がいやでした。
そのため、薬剤師免許を生かしてキャリアチェンジすることを決断しました。
2. 【衝撃】現場では「ロキソプロフェン」が通じない!?
大学の知識 vs 現場のリアル: 成分名で完璧に覚えたつもりでも、棚に並ぶのは「聞いたこともない商品名」ばかり。
「一般名」と「商品名」、同じ薬に対して名前が二通りあることは知っていましたが、1500品目もあるとなにがなんだか・・・。
一般名の記憶も薄くなっている私にとって商品名との紐づけは難問でした。
- 一般名:ロキソプロフェンナトリウム
- 商品名:ロキソニン
初日のパニック: 処方箋に書いてある名前と薬の箱が一致せず、調剤室で立ち尽くしたエピソード。
いきなり患者様に服薬指導はすることはありえず、まずは処方箋通りに薬をピッキングする作業からでした。
処方箋は商品名が記載されていますが、ほとんどの患者様はジェネリック医薬品を希望しているので一般名で探す作業。
解熱鎮痛剤としてOTCでも販売されている”ロキソニン”。
これをジェネリックに変更すると”ロキソプロフェンナトリウム”。
この程度の名前の変更でしたら覚えるのも探すのも容易です。
しかし、同じく鎮痛剤の”ボルタレン”。
これをジェネリックに変更すると”ジクロフェナクナトリウム”となり、一文字も合わない名前になります。
解熱鎮痛剤としてロキソニンやボルタレンよりなじみがある”カロナール”もジェネリックは”アセトアミノフェン”です。
私の感覚としては、一般名と商品名はまったく違うものが多いと思っています。
そして、当然、特許が切れる前の医薬品にジェネリックはなく、その薬は商品名で探します。
毎年特許切れの医薬品がでるのでジェネリックが発売されます。
なので、ジェネリックを採用するたびに商品名との紐づけをしていなくてはいけんません。
これは現役でいる以上、必須な作業です。
また、薬には劇薬・劇物・毒薬・毒物があります。
法律で棚の配置や表示方法が決められており、当然国家試験でも出題されたので勉強しましたが、劇薬に該当する薬がどれかまでは覚えておらず、見つけるまでにかなりの時間が必要でした。
妊婦や小児でも服用しやすいカロナール。
錠剤の規格は、200mgと300mg、そして500mgがあります。
処方箋:カロナール500mg 2T 1日2回朝夕食後 5日分
カロナール錠の500mgを10錠ピッキングするだけのとても簡単な処方です。
ですが、カロナール錠の500mgが棚にありません!
カロナールは20mg、300mgが近くに配置されているのに、500mgは周りに見当たらず・・・。
立ち尽くしていると、

カロナール錠の500mgは劇薬だよ
そうだったんです!
同じカロナールでも200mgと300mgは普通薬で、500mgは劇薬に分類されます。
境目は300mg。
ドライシロップは1回200mgの分包品でしたら普通薬ですが、DS20%や50%のバラ品は1回300mgを越えることもあるので劇薬に分類されます。
これはカロナールに限ったことではなく、気管支喘息などで処方されるテオフィリンなども該当します。
劇薬と普通薬は保管場所を分けないといけないので、どれが劇薬に該当するのか、規格も含めて覚えないといけません。
覚えているのといないのとでは、調剤にかかる時間がかなり異なるので、暗記必須です。
隙間時間を使って、棚を眺めたり引き出しを開けたりしたながら、一般名と商品名の紐づけや配置されている場所、劇薬に分類される医薬品名をひたすら覚えていました。
3. 「新卒じゃない」というプレッシャーとの戦い
7年間のブランク(研究職期間)で、用法・用量や薬効薬理が頭から抜けていた恐怖
国家試験を受けてから7年というブランクは長すぎました。
(大学院に進学しているので、研究所で働いていたのは5年ですが、国家試験を受けてからは+2年で7年ということです)
薬効はなんとなく覚えていましたが、用法・用量が適切なのかは調べないとわかりませんでした。
また、添付文書には1日1回と書かれているのに実際の現場では1日2回処方も当然のように出回っていています。
医師に問い合わせをしている履歴を調べたり、適用外の用法で服用する経緯を調べたりと最初は監査に時間がかかりました。
さらに、薬には薬効が似ていても薬理作用が違うので併用可のものもたくさんあります。
うろ覚えでは監査できません。
周りからは「経験者」として見られる中、基礎知識を学び直さなければならなかった苦労
調剤薬局での職務歴はないけど、新卒ではない私は腫れ物に触るような存在だったと思います。
いきなり服薬指導をお願いするわけにもいかず、だからと言って調剤ばかりやらせても・・・、と、悩ましい存在だったことでしょう。
メモした薬剤名を調べ、”今日の治療薬”片手に監査する私は昼休憩も使って学びなおしをしていました。
先輩薬剤師にはどんどん質問。
知ったかぶりで患者さんに迷惑がかかったら大変なのでプライドなど捨て教えてもらいました。
4. 働きながら知識を「最速」で取り戻した方法
私が日々やっていたのは、
監査した処方箋の薬剤名をメモしておいて、空いてる時間にその薬剤についての薬効・用法用量・最大投与量が言えるか確認
することです。
門前の病院からの処方を多く扱っていたので、これで処方箋の傾向はつかめてきます。
書籍も活用しました。
”調剤と情報”を毎月購読している薬局も多いのではないでしょうか。
載ってるクイズを解くとのも勉強になります。
そして、『できる薬剤師をつくる現場の教科書』
「薬局初日のパニックを救ってくれた一冊。基礎の基礎から、現場での立ち回りまで網羅されているので、私のような『異業種・ブランクあり』の薬剤師には、まさにバイブルでした。」
と、『薬剤師のための循環器疾患マネジメント』
心電図がよめる薬剤師ってかっこいいですよね!うろ覚えの知識を、自信を持って監査できる知識に変えてくれました。」
5. まとめ:環境を変える不安を抱えているあなたへ
「研究職の経験」は、決して無駄ではなかった
研究職で培った論理的思考は、処方を読み解くうえで役に立ちます。
また、効率よく仕事を行う上でも、誰がどのポジション(散剤調剤・軟膏Mix・監査・投薬)を担当すればスムーズに回るかを判断できます。
混雑時は黙々と作業を進めることが求められますが、研究職の人はもともと集中力が高く、一人で作業することに不安がない人が多いです。
真面目に取り組めばおのずと結果がついてきます!
こうして薬局でのキャリアをスタートさせた私ですが、数年後、再び大きな転機を迎えることになります。
正社員で転職した調剤薬局ですが、出産と引っ越しのためパートへと転職しました。
そして今、『正社員への復帰』に向けて、まさに転職活動の真っ最中です。
40代・パートからの再挑戦。そのリアルな経過もこのブログで綴っていきますので、ぜひまた遊びに来てくださいね!
知識の不安は努力で埋められる!
研究職の人はコツコツ派の人が圧倒的に多いと感じます。
医薬品の名前の名称、薬効薬理、用法用量などは一朝一夕で覚えられるものではありません。
毎日復習することで確実に覚えられ、調剤スピードも監査スピードも上がります。
すべては日々の努力!
